ほんとに怖い「苦手意識」の話
ありがたいことに、現在、青森県を代表する大手理系企業様からご依頼をいただき、高卒新入社員の方々へ化学の研修を担当しています。
受講されている方の出身校は、工業高校・商業高校・普通科高校などさまざまです。
授業をしていて感じるのは、さすが一流企業に入社された方々だということです。
・字が丁寧で読みやすい。
・挨拶や返事がしっかりできる。
・暗記すべき内容はきちんと覚えてくる。
ところが、化学の計算分野に入った瞬間、状況が一変します。
「%の意味がよく分からない。」
「分数の計算が苦手。」
「+・-・×・÷をどう使い分けるのか分からない。」
このような声が少なくありません。
内容を見てみると、その多くは小学校で学ぶ算数です。
もちろん、小学生の頃に理解できなかったとしても、大人になれば理解できる内容はたくさんあります。
しかし、一番の壁になるのは知識ではなく、「苦手意識」です。
「算数は苦手。」
「計算はあきらめよう」
そう思い込んでしまうと、その単元から無意識に避けるようになり、理解する機会そのものを失ってしまいます。
さらに最近、生徒を見ていて気になることがあります。
算数・数学は、
掛け算か割り算か
プラスかマイナスか
大きいか、小さいか
など、二択を迫られる場面が数多くあります。
本来は、「なぜその式になるのか」を考えて答えを導く教科です。
しかし最近は、その根拠を考える前に、
「たぶんこっち。」
「前もこれだったから。」
と、勘や感覚で選ぶ生徒が増えたように感じます。
私は、その背景には結果や評価を気にしすぎることと、間違いを恐れすぎることがあると考えています。
一見すると、
「間違えたくないなら、もっとじっくり考えるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、実際はそうとは限りません。
自分の考えが間違っているかもしれないという不安から、考えること自体を避け、
「時間をかけて考えても間違えるくらいなら、早く答えて次に進もう。」
という心理が働くことがあります。
その結果、考えることよりも早く答えることを優先する学習習慣が身につき、「二択を勘で乗り切る癖」が生まれてしまいます。
この癖は、問題の形が少し変わるだけで通用しなくなり、「やっぱり数学は苦手」という思い込みをさらに強めてしまいます。
保護者様の中には、
「小学校で分からなくても、中学校に入れば脳が発達し、自然と分かるようになるのでは。」
と考えられる方もいらっしゃいます。
しかし、残念ながら多くの場合、それは起こりません。
算数・数学は積み重ねの教科です。
以前に習った知識をもとに新しい概念を学ぶため、学年が上がるほど内容は難しくなり、苦手意識を克服するハードルや労力は年々高まります。
ある単元でつまずくと、その内容を使う次の単元、そのまた次の単元へと影響が広がっていきます。
だからこそ、「いつかできるようになるだろう」と先延ばしにするのではなく、分からなくなったその時に解決することが何より大切です。
そして、苦手を克服するために大切なのは、「間違えないこと」ではなく、「間違えても考え続けること」です。
「なぜその答えになるのか」を考える経験の積み重ねが、勘ではなく根拠をもって解く力を育て、本当の意味で苦手意識の克服につながると私は考えています。
夏休みは、苦手を克服する絶好のチャンスです。
「苦手だから後回し」ではなく、「苦手だからこそ今取り組む」。
その積み重ねが、この先の大きな自信につながります。




